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不正競争(営業秘密)

不正競争防止法とは?概要と対象行為をわかりやすく解説

「不正競争防止法とは、どのような法律なのだろうか」
「不正競争防止法は、どのような行為に適用されるのだろうか」
と気になりませんか。
この法律は、知的財産の保護だけでなく、会社が適切な取引を行うための環境を整える重要な役割を果たしています。
本記事では、概要等やその対象となる行為について詳しく解説します。

不正競争防止法とは、どのようなものなのか


弁護士
野俣 智裕
会社間の公正な競争を維持し、企業のノウハウのような知的財産を保護するための法律です。他社のブランド価値やビジネス上の秘密が不正に利用されることを防ぎ、企業が健全な取引を行うための環境を整備する役割を担っています。

不正競争防止法とその目的

不正競争防止法の目的は、会社同士の公正な競争を促進し、これに関わる国家間の決め事を守り、経済活動を健全に保つことにあります。目的を達成するため、不正な競争に対して法的措置を執ることが可能な仕組みになっています。

不正競争防止法が存在する理由

存在理由の一つは、既存の知的財産関連の法律ではカバーしきれない領域を保護するためです。ここでいう既存の知的財産関連の法律とは、特許法、商標法、著作権法など権利を付与している法律を指します。これらの法律は、それぞれ特定の権利を守るための法律ですが、これらの法律では保護されない無形資産も多く存在します。例えば、他社の営業秘密(公には登録できない性質のもの)を不正に取得・利用することです。既存の知的財産関連の法律だけでは十分に対応できません。このようなケースを取り締まるために、不正競争防止法が存在し、知的財産の保護と公正な競争環境の維持を補完しているのです。

不正競争行為に該当すること


弁護士
野俣 智裕
ここでは、該当する代表的な行為について解説します。

不正競争防止法2条1項1号

広く知られたブランドや名称との混同を引き起こす行い、いわゆる「周知表示混同惹起行為」が該当します。これは、他社のブランド名や商品名が広く認知されている場合、それと混同するような表示を使って商品やサービスを提供する行いです。

同項2号

全国的に有名な表示を利用すること、すなわち「著名表示冒用行為」が該当します。これは、他社の著名なブランドやロゴを使用し、自社の商品やサービスに利用することを指します。
例えば、世界的に有名なブランドロゴを模倣して商品に使用することで、そのブランドの信頼や価値を不当に利用することです。

同項3号

他社商品のデザインや形状を真似た商品を販売する等、いわゆる「形態模倣商品の提供行為」を規制しています。他社の商品デザインや形状を模倣することで、あたかも自社のオリジナル商品であるかのように見せることがこれに該当します。
例えば、独自のデザインを持つスマートフォンケースが人気を集めているとき、その形状をそっくり真似たケースを製造・販売することは、形態模倣商品の提供行為と見なされる可能性があります。

同項4号から10号

同項4号から10号では、営業秘密を侵害する行為が規定されています。営業秘密とは、企業が競争優位を保つために非公開としている技術情報や顧客リストなどを指します。これを不正に取得、使用、または第三者に提供することが営業秘密侵害に該当します。
例えば、従業員が退職後に以前の勤務先から持ち出した技術情報を新たな勤務先で利用することや、ライバル会社に売り渡すことは、この規定に違反します。

同項11号から16号

特定の範囲で提供されたデータの不正な取得・利用に関する規定です。これは「限定提供データの不正取得」に該当します。例えば、会社が特定の取引先に提供している高精度の地図データを不正に入手し、それを他の企業や自社のビジネスに使用するケースです。

同項17号、第18号

技術的な保護手段を無効にしてしまう装置や、プログラムを提供する行為が規制されています。例えば、ゲーム機をお客様から預かり、そのゲーム機で違法コピーソフトが遊べる状態にしてはいけません。

同項19号

不正な利益を得るためや、加害をするために他社のブランド名や商標に類似するドメイン名を取得し、それを自社のウェブサイトとして利用する行為等は、不正競争と見なされます。

同項20号

消費者を誤解させるような表示や行為を規制しています。これは「誤認惹起行為」と呼ばれ、例えば、商品の品質や産地などについて誤解を生じさせるような表示が対象となります。

同項21号

他社の信用を毀損する行為を制限しています。例えば、ライバル会社に対して根拠のない悪評を流布し、信用を損なうことが該当します。

同項22号

パリ条約の同盟国などにおいて、商標権を持つ者の代理として活動する者が、その権利者の許可を得ずに不正に商標を使用する行為を規制しています。代理人等の商標冒用行為と呼ばれます。

適用が除外されるケース

不正競争防止法には適用が除外されるケースもあります。例えば、自分自身の氏名や名称を不正な目的でなく使用するケースや、他者の表示が有名になる前から、すでに使用していた場合等です。

国際的な約束において禁止されている行為


弁護士
野俣 智裕
不正競争防止法は、日本国内だけでなく、国際的な取引や企業活動においても公正な競争を守るために適用されます。国際的なルールや条約に基づき、特定の行為が明確に禁止されており、これらの行為に違反した場合、厳しい処罰が科されることがあります。

外国の公務員への贈賄

国際的に禁止されている行為の一つが「外国の公務員への贈賄」です。これは、外国の政府関係者等に対して賄賂を提供し、自社が有利な契約や待遇を得るために働きかける行為を指します。

外国の国旗や紋章を不正な目的で使用する行為

外国の国旗や国章、紋章を不正な目的で使用する行為も国際的に禁止されています。具体的には、製品やサービスの宣伝において、外国の国旗や紋章を無断で使用し、それにより製品の信頼性や品質を誤認させる行為が該当します。

国際機関標章を不正な目的で使用する行為

国際機関(経産省令で指定)の標章やロゴを商標として使用する行為は禁じられています。これらの機関の標章を無断で使用し、自社製品やサービスがその機関の認可や支援を受けているかのように装う行為は、消費者に誤解を与えるため禁止されています。

不正競争防止法に違反した場合


弁護士
野俣 智裕
ここでは、違反した場合の民事的措置と刑事罰について解説します。

民事

被害者側は、民事訴訟を通じて以下のような請求を行うことができます。

  • 損害賠償請求
    違反行為によって発生した損害について、賠償を請求することが可能です。
  • 差止請求
    被害者は差止請求を行い、裁判所に対して違法行為の停止を求めることができます。
  • 信用回復措置の請求
    企業の信用が毀損された場合、信用を回復するための措置を請求することも可能です。例えば、新聞等での謝罪広告の掲載を要求することができます。

刑事

刑事罰に関しては、以下のとおりです。

  • 営業秘密を侵害した罪
    10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金(両方になることもある)
    海外での使用目的等がある場合、10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(両方になることもある)
  • 上記以外の侵害に関する罪(外国の公務員への贈賄を除きます)
    5年以下の懲役または500万円以下の罰金(両方になることもある)
  • 外国の公務員への贈賄
    10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(両方になることもある)

法人が業務として行ったことが罪に問われる場合、行為者だけではなく法人も処罰の対象となります。罪の類型によって、大きく10億円以下の罰金、5億円以下の罰金、3億円以下の罰金が科されます(法22条1項)。

まとめ

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を守り、知的財産や営業秘密を保護するための重要な法律です。権利を付与する知的財産関連の法律では十分にカバーできない領域を補完し、企業が健全な取引を行える環境を整えます。違反した場合には、民事的な賠償や差止請求だけでなく、厳しい刑事罰も科される可能性があります。
不正競争行為が疑われる場合や、具体的な対策が必要な場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。

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