「職務著作とは、どのような制度なのだろうか」
と気になりませんか。
企業では、日々さまざまな資料やコンテンツが作られています。
営業資料、社内マニュアル、Webサイトの記事、システムのプログラムなど、多くの成果が社員の手によって生み出されています。
こうした成果について、「社員が作ったものだから本人のものではないのか」と疑問に思う人もいるかもしれません。一方で、企業としては「業務として作ったものなのだから組織の資産ではないのか」と考えることも多いでしょう。
このような場面で関係してくるのが「職務著作」という制度です。
企業活動では、社員が作った資料やプログラムを継続して利用する場面が多いため、権利の扱いを正しく理解しておくことが重要になります。
この記事では、職務著作の基本的な仕組みや具体的なケース、さらにトラブルを防ぐための実務的な対策まで、企業の担当者にもわかりやすい形で解説します。

一般的に、文章やプログラムなどの創作的な成果は、それを作った人が管理できる権利を持つとされています。例えば、個人が自宅で書いた記事や自作のソフトウェアなどは、作成した本人が利用方法を決めることができます。
しかし企業では、社員が業務の一環としてさまざまな成果を作ります。
営業資料、マニュアル、社内システム、Webコンテンツなどは、企業活動を支える重要な資産です。
もしこれらの成果の権利がすべて個人に残ると、企業として継続的に利用することが難しくなる場合があります。
そこで、一定の条件を満たす場合には、業務として作られた成果を企業側の資産として扱う仕組みが用意されています。
職務著作の理解が重要になる理由は、企業活動の多くが情報やコンテンツによって成り立っているためです。
例えば、営業部門では提案資料や営業マニュアルが日々作られています。
これらは営業ノウハウが詰まった重要な成果です。
また、IT企業ではプログラムやシステムの設計書などが事業の基盤となっています。
仮に、これらの成果の権利関係が不明確なままだと、従業員の退職後に利用を巡るトラブルが起きる可能性があります。
例えば「自分が作った資料だから使わないでほしい」と主張されるケースもあり得ます。
そのため、企業では職務著作の考え方を理解し、業務の中で作られる成果の扱いを整理しておくことが重要になります。

企業では、業務を効率的に進めるために、社員がマニュアルや手順書を作ることがあります。例えば、新人向けの業務マニュアル、営業の提案テンプレート、社内研修資料などが代表例です。
これらの資料には、作成した社員の経験やノウハウが反映されていることが多いですが、基本的には企業の業務の一部として作られています。そのため、条件を満たす場合には企業側の資産として扱われることになります。
IT企業や社内のシステム部門では、エンジニアが日々プログラムを開発しています。顧客向けサービスのコードや、業務を効率化する社内ツールなどがその例です。
こうしたプログラムは企業の事業に直結することが多く、権利の扱いが曖昧だと大きな問題につながります。例えば、開発者が退職した後に利用を巡るトラブルが発生すると、システムの運用に支障が出る可能性があります。
広報やマーケティングの担当者が作成するWebコンテンツも、職務著作が問題になる代表的な例です。企業サイトの記事、採用ページの文章、SNS投稿などは、企業のブランドイメージに関わる重要なコンテンツです。
これらの成果は個人の創作活動ではなく、企業の広報活動として作られているため、一定の条件を満たす場合には組織の資産として扱われることになります。

文章やデザイン、プログラムなどの創作的な成果は、原則として作った人が管理できる権利を持つとされています。特別な手続をしなくても、作成した時点で生まれます。
例えば、個人がブログ記事を書いた場合、その記事の利用方法を決めるのは書いた本人です。第三者が無断でコピーしたり転載したりすることはできません。
この権利は小説や音楽だけではなく、実務で作られる多くの成果にも認められます。企画書、報告書、マニュアル、Web記事、プログラムコードなども対象になります。
そのため、企業で作られる資料やシステムについても、権利の扱いを整理しておくことが重要になります。
ただし、企業の指示や企画に基づき業務として作られた場合には、例外的に組織側に権利が帰属することがあります。これが職務著作の考え方です。
企業活動を安定して続けるために、一定の要件を満たし、業務として作られた成果については組織の資産として扱う仕組みが設けられています。

まず、その成果が企業の企画や指示に基づいて作られている必要があります。
業務の一部として作成されたものであることが重要です。
次に、企業の業務に関わる人が作っていることも条件になります。通常は社員が該当します。
その成果が業務の一部として作られていることも必要です。私的な活動として作られたものは、この条件には当てはまりません。
企業の名前で公開されることも重要な要素です。例えば、企業サイトの記事や企業名義のマニュアルなどがこれに該当します。
ただし、この条件は、プログラムの著作物には適用されません。
作成時点の契約や就業規則などに、職務著作の結果と異なる扱い(たとえば「著作者は従業員本人とする」など)が定められていないことも条件になります。
そのような定めがある場合には、その合意内容が、法律上のデフォルトルール(職務著作)より優先されます。
プログラムの著作物は、著作権法第15条2項で特に定められています。すなわち、会社の企画や指示に基づき、従業員が職務上作成したプログラムで、作成時点の契約や就業規則等に著作者を従業員とするなど「別段の定め」がない場合、そのプログラムの著作者は、会社となります。

まず重要なのは、権利の扱いを明確にしておくことです。就業規則や雇用契約書に、業務として作られた成果の扱いを記載しておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。
例えば、業務の中で作られた資料やプログラムについては企業側が管理することを明記しておくと、社員との認識のズレを防ぐことができます。
もう一つ重要なのは、社員への説明です。ルールがあっても社員が理解していなければ意味がありません。
社内研修やガイドラインを通じて、業務で作られる資料やコンテンツの扱いを共有しておくことが大切です。特にクリエイティブ業務に関わる部署では、この点をしっかり説明しておく必要があります。
社員が作った資料やプログラムの権利は、必ずしも作成者個人に残るとは限りません。業務として作られた場合には、一定の条件のもとで組織の資産として扱われることがあります。
企業としては、こうした仕組みを理解し、就業規則や契約書でルールを明確にしておくことが重要です。事前に整理しておくことで、退職後のトラブルや利用を巡る問題を防ぎやすくなります。
お悩みの方はぜひ、当事務所までお気軽にご相談ください。