「AI音声の活用を検討しているが、著作権の問題はどうなるのだろうか」
「AI音声に著作権はあるのだろうか」
と気になりませんか。
近年、生成AIによる音声合成技術が急速に進化しています。
ナレーションや社内動画、さらには広告まで幅広く活用され始めていますが、同時に「著作権侵害や権利トラブルに発展するのではないか」という懸念も強まっています。
とくに声優やアーティストの声を模倣したAI音声が出回るケースが増えており、企業にとっても無視できないリスクとなっています。
本記事では、企業が知っておくべき基本知識とリスク回避のポイントを整理します。

著作権は「思想や感情を創作的に表現したもの」に対して認められる権利です。台本や歌詞、小説などの文章は著作権で守られます。つまり、AI音声が小説を朗読する場合、その小説自体に著作権があるため、著作権者の許可がなければ利用はリスクとなります。
文章を声に出して読む「朗読」や、歌を歌う行為は「実演」とされ、実演を行った人には「著作隣接権」が認められます。声優やナレーター、歌手などの演技・歌唱にはこの権利が働くため、その音声をAIで模倣すると著作隣接権の侵害につながる可能性があります。
法律に明文があるわけではありませんが、判例上「有名人の名前や姿といった要素を無断で商品や広告に使うこと」を規制する考え方が存在します。これがいわゆる「パブリシティ権」です。声がパブリシティ権に含まれるかどうかには議論がありますが、タレントや声優の声をAIで再現し、商品PRに使う場合には、この権利侵害を指摘される可能性があるのです。
一般的な日常会話など「ありふれた声」自体には著作権は認められない傾向にあります。しかし、その声が「著作物を朗読している」「特定の有名人を模倣している」といった状況では、著作権・著作隣接権・パブリシティ権が関係してくるため、注意が必要です。

有名アーティストの歌声をAIで模倣し、カバー楽曲としてネットに公開する事例が増えています。本人の許可なく作られたものは権利侵害の可能性があり、業界全体で問題視されています。
SNSや動画サイトでは、人気キャラクターや声優にそっくりなAI音声が簡単に拡散されています。本人の関与がない場合でも、視聴者は混同しやすく、トラブルにつながりやすい状況です。
日テレニュースの報道によると、2024年、声優や音楽業界の関係者が「AIによる声の無断利用をやめてほしい」と訴える会見を開きました。AIが本人そっくりの声を生成できるようになり、実際に一部の声優の声が許可なく使われている事例も確認されています。
参考:日テレニュースNNN
https://news.ntv.co.jp/category/culture/ab345983ce2542ed9331785112c1a9da

日本の著作権法には、AIの学習目的で著作物を利用することを一定範囲で認める規定(情報解析のための利用)が存在します。そのため、研究目的で公開データを取り込むこと自体は違法とならないケースもあります。
一方で「特定の人物の声を再現する」ことを目的とした学習は、権利侵害と指摘される可能性が高まります。特に商業利用を前提とする場合、無断で声優や歌手の声を学習させるのは避けるべきです。

社内研修や動画広告、商品PRなど、ビジネスにAI音声を活用する場面は増えています。しかし、商用利用は非営利利用よりもはるかに法的チェックが厳しく求められます。
例えば、無償のAI音声サービスを用いてCMを作成した場合、そのサービス自体が著作権処理を適切に行っていなければ、企業側が利用者として責任を問われる可能性があります。利用規約を確認するだけでなく、契約上「商用利用可」と明示されているかを必ず確認することが重要です。
AI音声が特定の声優や歌手の声に酷似している場合、著作隣接権やパブリシティ権の侵害と指摘されるリスクがあります。
特に、顧客が「これは本人の声だ」と誤認するような音声を広告や商品に使用した場合、不正競争防止法や消費者保護の観点からも問題視される可能性があります。海外ではすでに「声の無断模倣」に対して訴訟が起きており、日本でも同様の議論が始まっています。企業としては「似ているかどうか」グレーゾーンに立ち入らない姿勢が安全策です。
AI音声に小説や新聞記事を読み上げさせる場合、その文章自体が著作権で保護されています。著作権者の許可を得ないまま読上音声を公開・販売すると、著作権侵害に該当する可能性があります。
例えば、新聞記事をAI音声で読み上げ、それをポッドキャスト配信や社外向けの広報素材として利用する場合、著作権者から利用停止や損害賠償を請求されるリスクがあります。研修など社内利用にとどめる場合も、範囲や利用方法によってはリスクを完全に避けられないため注意が必要です。

無料・有料を問わず、AI音声サービスには必ず利用規約が設けられています。そこに「商用利用の可否」や「禁止される用途」が細かく書かれているため、必ず確認する必要があります。規約に違反した利用を行うと、著作権侵害の責任を追及されるだけでなく、契約違反として損害賠償を求められるリスクもあります。
一部の生成AIでは、無断で収集された声優やアーティストの声データを学習に利用している可能性が指摘されています。そのようなサービスを使ってしまうと、知らない間に第三者の権利を侵害してしまう危険性があります。契約や監修のある「正規のAI音声サービス」を選ぶことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
規約どおりに利用していても、著作権や著作隣接権の解釈はケースごとに異なり、完全に安全とは言い切れません。特に広告や顧客向けのサービスにAI音声を導入する場合、相手方から「声が似ている」とクレームを受けるケースも考えられます。法的リスクを事前に把握し、トラブルを未然に防ぐためには、早めに弁護士など専門家へ相談することが有効です。
AI音声の活用は、企業の業務効率化やコスト削減に大きく貢献しますが、その一方で著作権や著作隣接権、パブリシティ権など、複数の権利侵害に関わるリスクを伴います。とくに特定の声を模倣したり、著作物を無断で読み上げたりする行為は、意図せず権利侵害にあたるおそれがあり、企業イメージの低下や法的トラブルに発展する可能性があります。
AI音声を安全に利用するためには、まず利用規約や契約内容を丁寧に確認し、正規のサービスを選ぶことが欠かせません。さらに、商用利用や広告活用など、外部に公開する場面では、専門家の助言を受けながら慎重に進める姿勢が求められます。
AI技術の進化は止まりませんが、企業として法的リスクを理解し、適切なルールのもとで活用することが重要です。AI音声の利用に関して不安や疑問がある場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。