意匠とは?対象や、制度の目的について解説します
「意匠とはどのようなものを対象にしているのだろうか」
「意匠とは、その制度の目的とは、どのようなものなのだろうか」
と気になりませんか。
意匠とは、物品の形状、模様、色彩、またはこれらの結合によるデザインのことを指します。具体的には、製品の外観や視覚的な特徴が意匠の対象となります。意匠は製品の魅力や市場競争力を高めるために重要であり、特許庁などの公的機関によって意匠権として保護され得ます。
今回は、意匠とは何かについて、その対象、制度の目的について解説します。
意匠とは何かについて気になっている方はぜひ、最後まで読んでいってください。
意匠とは?

弁護士
野俣 智裕
意匠とは、物品や建築物の形状、模様、色彩、またはこれらの結合によるデザイン、画像のことを指します。
詳細については、以下の通りです。
・物品や建築物、画像
・物品そのものが有する形状であること
・視覚で認識できるものであること
・視覚により美感が起こるものであること
それぞれについて解説します。
物品や建築物、画像
意匠は、具体的には以下のようなものを対象とします。
- 物品(家具、家電製品、衣類など)
- 建築物(建物の外観や内部のデザイン)
- 画像(パソコンのアイコンやインターフェースデザイン)
2019年の意匠法改正により、画像や内装、建築物が追加されています。
物品そのものが有する形状であること
意匠は物品自体が持つ形状を対象とします。つまり、製品の形そのものがデザインの中心となります。登録できないものの例としては、ラテアートのように形状を維持することが困難な商品は形状が維持できず登録できません。
視覚で認識できるものであること
意匠は視覚的に認識可能であることが必要です。視覚に訴える形や模様、色彩の組み合わせが意匠の重要な要素となります。
視覚により美感が起こるものであること
意匠は視覚を通じて美的感覚を引き起こすものである必要があります。美感を伴うデザインは、消費者の購買意欲を高め、市場での競争力を強化します。
意匠とデザインの違い

弁護士
野俣 智裕
意匠とデザインは共に視覚的な要素を扱う概念ですが、その目的や適用範囲に違いがあります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
意匠とは、工業用に使われるものであること
意匠は主に工業製品のデザインに関連しています。具体的には、以下のような特徴があります。
- 工業用製品の形状や装飾:製品の形状、模様、色彩、またはこれらの結合によって構成されるデザイン。
- 製品の量産:大量生産を前提としたデザインで、同じデザインが多数の製品に適用されます。
- 機能性と美観:美しさだけでなく、製品の機能性も考慮したデザインが求められます。
- 法的保護:意匠権によって保護され、不正利用や模倣を防ぎます。
デザインとは芸術目的で作られた作品
デザインはより広範な概念であり、芸術目的や装飾的な作品も含まれます。以下のような特徴があります。
- 芸術的表現:美的価値や創造性を重視し、芸術作品としての価値が高い。
- 多様な媒体:絵画、彫刻、グラフィックデザイン、ファッションデザインなど、多岐にわたる媒体に適用されます。
- ユニーク性:個々の作品が独自性を持ち、一点物や限定版であることが多い。
- 美観重視:主に高尚な美しさや感動を与えることが目的で、機能性よりも芸術性が重視されます。
このように、意匠は工業製品の量産を前提としたデザインに関わり、デザインはより広範な芸術的表現を含む概念として区別されます。
意匠制度の目的

弁護士
野俣 智裕
意匠制度の目的は、デザインの創作者の権利を保護し、産業の発展や市場の健全な競争を促進することにあります。具体的な目的は以下の通りです。
- 創作意欲の向上
デザイナーや企業が独自のデザインを創作する意欲を高めます。意匠権によってデザインが保護されることで、創作活動が促進されます。
- 産業の発展
新しいデザインの普及と利用を促進し、産業全体の発展を図ります。これにより、消費者の選択肢が広がり、産業界の競争力が向上します。
- 市場の健全な競争
他人のデザインを無断で模倣することを防ぎ、公正な競争環境を維持します。意匠権により、創作者が正当に利益を享受できるようになります。
- 消費者の利益
消費者が質の高い製品を選択できるようにします。デザインの品質が保証されることで、消費者は安心して製品を購入することができます。
- 経済的利益の確保
意匠権を取得することで、創作者や企業はデザインの独占的利用権を持ち、経済的な利益を確保できます。これにより、投資のリターンが保障され、さらなる創作活動が奨励されます。
意匠制度は、これらの目的を達成することで、デザインの価値を高め、創作者の権利を保護し、産業の発展に寄与しています。
令和元年改正意匠法で新たに追加された対象とは

弁護士
野俣 智裕
令和元年改正意匠法により、従来の意匠登録対象に加えて、以下の3つが新たに追加されました。
・画像
・建築物
・内装
それぞれについて解説します。
画像
従来の物品に関連する画像(例えば、スマートフォンやパソコンの画面に表示される)だけでなく、以下のような画像が意匠登録の対象となりました。
- ディスプレイ上以外も対象になった:物品以外の場所に対して投影される画像
- 操作画面:アプリケーションやソフトウェアの操作画面デザイン。
特にUI(ユーザーインターフェースの略称)も登録可能となった点は大きな変更点です。
建築物
従来は建築物の外観や内部構造が意匠登録の対象外でしたが、改正により以下の点が対象となりました。
- 建物の外観デザイン:住宅、商業施設、公共建築物などの外観デザイン。
以前は動産しか保護されませんでしたが、不動産も保護対象となった点が大きなポイントです。
内装
内装のデザインも意匠登録の対象となりました。具体的には、以下のようなものが登録可能です。
- 商業施設の内装:例えば、店舗やレストランの内装デザイン。
- オフィスや住居の内装:オフィスや住宅の内部デザインも含まれます。
- 一体としてのデザイン:家具や照明、装飾品が一体となって形成する内装のデザイン。
法改正される前までは、原則として一つの製品につき一つの出願しかできなかったため、これを登録することができませんでした。しかし、法改正によって、内装に関しては例外を作る形で、その内装が全体を通して統一的な美感を生じさせると認められた場合には、一個の意匠として登録することが可能となりました。
意匠の権利が存続する期間
意匠登録の保護期間は登録日から最長25年までです。しかし、登録出願日によって保護期間が異なることがあります。たとえば、2007年4月1日から2020年3月31日までの出願の場合は最長20年、2007年3月31日以前の出願の場合は最長15年となります。
まとめ
意匠とは、物品や建築物の形状、模様、色彩、またはこれらの結合によるデザイン、画像を指します。意匠制度は、デザインの創作者の権利を保護し、産業の発展や市場の健全な競争を促進することを目的としています。2019年の意匠法改正により、画像、建築物、内装が新たに意匠登録の対象となりました。意匠の権利は最長25年間保護されます。これにより、デザイナーや企業は経済的な利益を確保しつつ、創作活動を続けることが可能です。意匠登録などについてお悩みの方はぜひ、当事務所までお気軽にご相談ください。
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