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特許とは？基本から理解する特許制度の仕組み
「特許とは、そもそもどのようなものなのだろうか」
「特許制度の仕組みについて、様々なことを、広く知りたい」
と気になりませんか。
特許は、発明や技術的なアイデアに対して与えられる独占的な権利であり、新しい技術が世に出ることを促進するための重要な制度です。この記事では、特許制度の基本から、取得のメリット・デメリット、さらに特許を用いたビジネスの展開について具体的に解説します。
特許の基本概念とは
弁護士
野俣 智裕
ここでは、特許の基本概念について解説します。
特許とは何か？
特許とは、発明を行った人や企業が一定期間、その発明を独占的に使用できる権利を指します。この権利により、他者が無断で発明を使用することが防がれ、発明者のアイデアや技術が保護されます。特許を取得するには、発明が新規性、進歩性、産業利用可能性等の条件を満たす必要があり、この条件をクリアすると特許権が付与されます。
特許の目的
特許制度の目的は、発明者にその発明の独占的利用権を与えることで、技術革新を促進し、社会の発展を支えることです。また、発明内容が公開されることで、他の技術者や研究者が発明から新たな技術を開発しやすくなる環境も提供されます。特許制度は、発明者がその成果から利益を得られるようにする一方で、技術が広く普及する仕組みをつくり、イノベーションの加速を目的としています。
特許を取得するメリット
弁護士
野俣 智裕
ここでは、特許を取得するメリットについて解説します。
発明の独占的な利用権を得られる
特許を取得することで、発明者はその技術を独占的に使用する権利を得ます。これにより、他者が特許技術を無断で使用することを防ぎ、自社が競争で優位に立てます。この独占権により、新たな市場の開拓や競合の参入を抑制することが可能です。
ビジネス上の価値向上と収益化
特許を保有することは企業にとっても大きなビジネス資産となります。特許技術を活用した製品やサービスの開発により、市場での価値を高めるとともに、特許ライセンスの提供によって収益化する方法もあります。たとえば、他者に対して特許の使用許諾を行い、ロイヤリティ収入を得るなど、特許を収益源として活用できます。
ブランド価値と信頼性の向上
特許を取得している技術は、高い技術力を示す証ともなります。消費者や取引先に対して「独自技術を持つ企業」としての信頼性をアピールでき、ブランド価値の向上につながります。特許技術を基にした製品は、競合製品との差別化要素にもなり、顧客からの信頼を得やすくなるため、販売促進にも寄与します。
特許取得のデメリット
弁護士
野俣 智裕
特許取得にはメリットがある一方、費用や情報公開などのデメリットも存在します。ここでは、特許取得のデメリットと、それに対する対応策を合わせて解説します。
費用がかかる
特許の取得と維持には多額の費用がかかります。出願費用、審査請求料、年次の維持費用など、特許権を保有するためのコストは特に長期間にわたる場合、大きな負担になります。特に複数の国にわたって特許を取得する場合、その費用はさらに増加します。対応策としては、費用対効果の分析を事前に行い、特許取得がビジネスに貢献するかを評価することが重要です。ROI（投資収益率）を計算し、費用に見合う利益が見込めるか検討しましょう。
発明内容の公開
特許出願後、発明内容が一般に公開されるため、技術の詳細を競合他社に知られるリスクがあります。特許制度の目的として技術の公開が義務づけられているため、秘密にしておきたい情報がある場合には、この公開がデメリットとなり得ます。発明内容を公開したくない場合には、特許出願を避け、企業秘密として管理する選択肢もあります。例えば、ノウハウとして社内で秘匿し、第三者に漏れないように徹底することで、技術が模倣されるリスクを抑えられます。また、特許公開後にすぐに模倣されないよう、継続的に技術を改良して新たな特許を追加取得することで、優位性を保つことができます。
審査に時間がかかる
特許審査には長い期間が必要です。特許の審査には1年以上かかることも珍しくなく、その間に市場状況が変わる可能性があります。技術が陳腐化してしまった場合、特許を取得できても実質的な利益を得られないリスクが生じます。
特許の基本的な仕組み
弁護士
野俣 智裕
ここでは、特許の基本的な仕組みについて解説します。
特許権の独占排他権とは？
特許権の「独占排他権」とは、特許権者が他者の無断使用を排除し、自分だけが発明を独占的に利用できる権利を持つことを意味します。具体的には、特許を取得した技術や発明に対して、特許権者の許可なく利用することを禁じる法的な力を持ちます。この独占排他権によって、特許権者は競争上の優位性を確保でき、発明を独自のビジネスに活用しやすくなります。
特許公開義務と社会への貢献
特許制度には、発明の内容を公開する義務があります。これは、特許が技術の発展に貢献するための仕組みです。特許出願から18か月後には、発明内容が公開され、社会に知識として共有されることで、他の技術者や研究者が参考にすることが可能になります。これにより、次世代の技術開発が促進され、社会全体の技術力向上に寄与します。公開義務は発明者にとってリスクにもなり得ますが、この仕組みにより技術革新が進み、特許制度が社会貢献を果たすことが期待されています。
特許権の存続期間と終了後の取扱い
特許権には法的な存続期間が定められており、通常は出願日から原則として20年間です。この期間中、特許権者は発明の独占利用が可能ですが、期間が終了すると特許権が消滅し、その発明は公共財として社会に還元されます。つまり、特許権の存続期間終了後は、誰でも自由にその技術を利用できるようになり、さらに多くの人がその技術に基づいた製品やサービスを提供することが可能となります。この取扱いによって、特許制度は一時的な独占と最終的な技術の共有を両立させ、長期的な社会の利益を目指しています。
身近にある有名な特許
弁護士
野俣 智裕
ここでは、私たちの生活にも馴染み深い、身近な製品に関する特許について紹介します。
雪見だいふく
株式会社ロッテの雪見だいふくは、アイスクリームをもちで包むというユニークな形状を実現するため、特別な粘弾性物質を利用しています。この技術は、長期間にわたって食感を維持し、風味や食感が改善された冷菓を提供するために開発されました。特に、もち米とうるち米の割合を工夫し、でん粉と糖類の組み合わせによって、冷凍されても柔らかさが持続する特徴を持たせています。具体的には、もち米とうるち米の割合を調整し、そこにでん粉と砂糖、さらには水分を一定の範囲で加えることで、柔らかく粘りのある食感を実現しています。現在は存続期間が満了したことで特許権が消滅しています。
参考：J-PlatPat 特許4315607号
切り餅
越後製菓株式会社の切り餅の特許です。お正月になるとテレビで「越後製菓！」と印象に残るコマーシャルを見かけた方も多いと思います。この特許は、角形の切り餅に特定の切り込みを施すことで、加熱時の膨化による餅の「噴き出し」を防止する技術に関するものです。この切り込みは、餅の立直側面（長辺部）に設けることで、焼き網が汚れにくく、焼き上がりの美感を損なわずに均一な焼き上がりを可能にしています。また、噴き出しを制御することで、食べやすく見た目にも良い仕上がりが期待でき、餅の消費量が増える効果も狙っています。現在は、存続期間満了により特許権は消滅しております。
参考：J-PlatPat 特許4636616
押し寿司
この特許技術は、押し寿司のネタとして豚肉を活用するための加工方法に関するものです。一般的に、押し寿司といえば魚が用いられることが多いですが、この技術では醤油で煮た豚肉を使うことで、異なる風味と食感を持つ押し寿司が提供されます。現在は年金不納によって特許権が消滅しております。
参考：J-PlatPat 特許4332138
まとめ
特許制度は、発明者に独占的な利用権を与え、技術の普及と革新を促進するための大切な仕組みです。特許取得により、ビジネスにおける競争優位性や収益化の可能性が広がり、ブランド価値の向上にもつながります。しかし、特許取得には費用や情報公開といったデメリットもあるため、事前の十分な分析が必要です。また、特許の仕組みを理解し、ビジネスに活用することで社会への貢献も期待できます。特許に関するご相談や詳しいアドバイスについては、当事務所までお気軽にご相談ください。
