「生成AIで作った作品には著作権はあるのだろうか」
「最近生成AIと著作権が話題になっているが、企業が気を付けるべきポイントはあるのだろうか」
と気になりませんか。
生成AIは文章や画像、動画などをすぐに作ることができるため、企業の業務効率化やプロモーションに活用される場面が急増しています。しかし、その一方で、著作権をめぐるトラブルや炎上、法的リスクも顕在化してきました。
この記事では、生成AIをビジネスで安全に使うために知っておきたい著作権の基本や注意点を解説します。

ChatGPTや画像生成AIなどの普及により、日本企業でも徐々に生成AIの業務利用が進みつつあります。総務省の調査によれば、とくに文書作成やマニュアル作成といった社内業務での活用が多い傾向にあります。一方で、著作権や倫理面の懸念も根強く、企業は実務とのバランスを見極めながら慎重に導入を進めているのが実情です。
参考:総務省
報道によると、2025年6月、ディズニーとNBCユニバーサルが、画像生成AI「ミッドジャーニー」の運営企業を著作権侵害で提訴しました。
参考:NHK
スター・ウォーズなどのキャラクターに酷似した画像が無断生成・掲載されていたことが問題視されたのです。「典型的な著作権のただ乗り」として、画像の配布差止めを要求しました。ハリウッド大手が動いた初の事例として注目されています。

AIが作った画像や文章が、漫画やアニメ、絵本や小説など既存作品と酷似していると、著作権上の問題になる可能性があります。たとえ学習データに直接触れていなくても、「類似性」が高ければ指摘されるリスクがあるため、商用利用時は慎重な判断が求められます。
AIが学習したデータに著作物が含まれていると、生成物も「元作品に依拠している」と判断され、著作権を侵害しているとみなされる可能性があります。ここでの「依拠」とは、既存の作品を参考にして新たなものが生まれている状態を指します。文化庁は「作品の著名性」や「学習の経緯」などを総合的に見て判断するとしています。

文化庁は、AIが自動で生成した画像や文章について、「人の創作的関与がない限り、著作物とは認められない」との見解を示しています。プロンプトを入力しただけの成果物は、法律上は“機械的な出力”と見なされ、保護対象にならない可能性が高いのです。
ただし、この分野は法整備が追いついておらず、現時点でも議論が続いています。文化庁も「これから整理していく」としており、明確な線引きはまだありません。
一方で、生成AIが作ったコンテンツでも、人間が構図の工夫や文章の編集など、創作的な手を加えた場合には、その成果物が著作物として認められる可能性があります。
著作権法は「人間の創作性」を保護の対象とするため、AIの自動出力に対し、人の判断や工夫が加わった場合には、その部分に著作権が発生し得るというわけです。
文化庁も、こうした「創作的寄与」の考え方を整理中であり、どこからが人の創作とみなされるかは、現在も議論が続いています。今後の判断は個別事例ごとに分かれる可能性が高く、明確な基準はまだ定まっていません。

無料の生成AIツールには「商用利用不可」と記載されているものもあり、社内資料や営業文書への使用すら規約違反になることがあります。ただし、商用利用OKのツールを選べば問題は回避できます。業務利用を前提とするなら、利用規約を確認し、商用利用が許可されたサービスだけを使うようにしましょう。
生成AIはネット上の情報を学習しているため、差別表現や誤情報が出力されることがあります。特に社外向け資料に使う場合は、社内ルールでチェック体制を定め、人の目で必ず確認することが重要です。特に差別問題や誤情報に関しては特に「AIのせい」は通用しないため、情報発信の最終的な責任は人間が負うという意識を持たなくてはなりません。内容に不安があれば専門家の確認も検討しましょう。
AIの出力物が、既存のロゴやキャラクターに酷似することがあります。学習データをもとに構造を模倣するため、意図せず著作権侵害とみなされる可能性も否定できません。「AIが作ったからOK」とは言えず、人の目で既存作品との類似を必ず確認しましょう。

AIで作った画像を広告やバナーに使用した企業が、SNS上で「元画像の著作権に違反しているのでは」と指摘され、炎上騒動になったケースがあります。
AIが学習した画像の中には著作権のある素材が含まれていることもあるため、生成画像をそのまま商用利用するのは注意が必要です。とくにフリー素材と誤認して使ってしまうと、意図せず権利侵害になるリスクもあります。
AIによって出力された画像が、特定のイラストレーターの作風と酷似しており、「盗作ではないか」と批判を受けた事例もあります。
構図や色彩の選び方など、見た目の印象が似すぎていると、たとえ著作権上は問題がなくても、倫理的に問題視されやすくなります。プロンプトに実在の作家名を入力していた場合は特に炎上の火種となりやすいため、企業利用では慎重な判断が求められます。
生成AIが作った画像に、差別的あるいは性的に不適切とされる表現が含まれていたことで、批判を浴びたケースもあります。
たとえば、高齢者や外国人を揶揄するような構図や、女性の身体を過度に強調した描写などは、出力時の意図に関わらず炎上の原因となります。AIはネット上の偏ったデータを学習しているため、こうした表現が紛れ込むリスクがあります。
発信前には社内での複数人レビューなど、ダブルチェック体制を整えることが推奨されます。

AIが作ったコンテンツをそのまま使うと、著作権の保護対象にならずトラブルの原因になる可能性があります。文章なら自社の見解や事例を織り交ぜる、画像なら構図や配色をアレンジするなど、人の創意を加えることで「オリジナル性」を持たせることが重要です。
AIが作ったからと言って、著作権的に安全とは限りません。商標やキャラクターに類似した要素が含まれていないか、必ず目視で確認しましょう。チェックリストを活用し、広報・法務とも連携して確認フローを整えると安心です。
「他者の権利に触れそう」「判断がつかない」場合は、知財に詳しい弁護士や弁理士に事前相談するのが安全です。後からの炎上や損害賠償を避けるためにも、業務にAIを導入する段階で使用ルールを整理しておくとリスクを抑えられます。
生成AIの活用には、著作権や出力内容への配慮が大切です。商用で使う前に、一度専門家に確認することをおすすめします。気になる方は、当事務所までお気軽にご相談ください。