「二次創作と著作権はどのような関係性なのだろうか」
「二次創作にも著作権があると聞くけれど、実際はどのように扱われるのだろうか」
と気になりませんか。
アニメやゲームの人気作品を題材にしたファンアートや二次創作は、SNSや同人文化の発展とともに広がり続けています。
しかし、これらは著作権の観点から見ると、法律上グレーではなく「原則NG」とされるケースも多く、企業がうっかり使用すると大きなリスクを招くおそれがあります。
この記事では、企業が二次創作と著作権をどう捉え、どう対応すべきかを中心に、基本的な考え方から注意すべきポイント、実務的な対策まで、わかりやすく解説していきます。

一般的に「二次創作」とは、既存のアニメ・漫画・ゲームなどのキャラクターや世界観をもとに、新たな物語やイラスト、小説、動画などを創作する行為を指します。ファンアートや同人誌、パロディ作品などが代表例です。
著作権法では、「翻訳・編曲・脚色・映画化などによって、既存の著作物をもとに新たに創作された著作物」を「二次的著作物」と定義しています。
たとえば、以下のような作品が典型例です。
このように、「二次的著作物」は元作品の著作権者の許諾を得たうえで、商業的にも正式に制作されるケースが多く、法的な保護も受けます。
一方、ネット上に広がる多くの二次創作は、著作権者の許可を得ていないケースが多く、著作権侵害となるリスクを抱えています。

翻案権は、原作をもとに新たな表現を加える権利です。たとえば、楽曲のメロディをそのまま使って別の歌詞をつける、バラードをロック風にアレンジするといったそんな行為が該当します。
アニメや漫画でいえば、キャラや設定を借りて別の展開を描く二次創作も、無断で行えば翻案権の侵害にあたる可能性があります。
複製権とは、著者が著作物をコピー・印刷・録画・保存するなどして複製する権利です。
例えば、原作のイラストやセリフを画像としてSNSにアップすることや、冊子にそのまま引用する行為はこの権利を侵害するおそれがあります。
企業がパンフレットやイベント資料に使用する場合は特に注意が必要です。
公衆送信権とは、著作物をインターネット上などで公衆に向けて発信・配信する権利です。
SNSやホームページに無断でキャラクター画像や動画を掲載した場合、この権利の侵害になります。
とくに企業公式アカウントによる投稿は、非営利の個人よりも責任が重くなる傾向があります。
著作者人格権とは、作者の名誉や意思を守るための権利で、譲渡や相続ができません。
主に次の3つがあります。
たとえば、原作キャラを無断で改変し過激な表現に使うと、この人格権の侵害となるおそれがあります。

二次創作の多くはファンによる「愛ある創作活動」として行われており、原作者や権利者としても過剰に取り締まることでファン離れを招くリスクがあります。
特に日本の漫画やアニメ文化では、同人誌やイラスト投稿などがファンコミュニティの中で発展してきた経緯があり、一定の非営利目的の活動は黙認されがちです。
著作権侵害の多くは「親告罪」に分類されます。つまり、著作権者が「告訴」しない限り刑事事件として立件されることはありません。
権利者が黙っていれば法的に問題にならないように見えるため、「グレーゾーン」のまま流通するケースも少なくありません。
代表的な事例として、「ドラえもん最終回事件」があります。
報道によると、作者が描いていない“最終回”を一般人が漫画化し、約1万3000部を販売した件で、小学館と藤子プロが著作権侵害を主張し、警告と損害賠償請求を行いました。
裁判には至らなかったものの、商業的規模の拡大や原作の意図を逸脱する内容については、黙認されないケースがあることを示しています。
参考:朝日新聞

著作権法に「パロディ」の明確な規定はなく、元ネタが判別できれば侵害の可能性があります。特に企業が営利目的で使う場合はリスクが高まります。
販促物・SNS投稿・無料イベントでも、業務に関係すれば商用扱いとなる可能性があります。たとえ社内制作でも、他社IPの無断使用はNGです。
無許可使用や不適切な二次創作は、SNS炎上や信頼失墜につながる危険性があります。特に子ども向け・宗教・政治関連は慎重に扱いましょう。

無断利用を知りながら何も対応をしないでいると、利用者から「暗黙のうちに許諾された」と解釈されてしまうおそれがあります。
ファンによる善意の創作であっても、内容がキャラクターの世界観を大きく損なうことや、公序良俗に反するものであれば、企業のブランドイメージにマイナスの影響を与えます。
そうした場合には、速やかに削除を求めることや、注意喚起の文書を送付するなどの対応が必要です。
商業目的での大量販売や、第三者による権利の名義詐称・改変など、著作権侵害の程度が著しい場合には、民事訴訟や刑事告訴といった法的手段を検討する必要があります。

企業が自社コンテンツの二次利用に関するガイドラインを公開することがあります。
「個人・非営利に限って利用可」「商用利用は禁止」など、具体的な条件を明文化することで、利用者の誤解やトラブルを未然に防ぐことができる可能性があるのです。
また、ガイドラインは企業の姿勢を示す広報的役割も果たすため、ファンとの良好な関係構築にもつながります。
企業のキャラクターやコンテンツの制作を外部に委託する場合、その著作権の帰属を明確にしておく必要があります。
著作権を企業側に帰属させる契約を交わしていないと、後に「著作権は制作会社にある」と主張されるリスクもあります。
トラブル防止のためにも、契約段階で「著作権の譲渡」や「利用許諾の範囲」を明記しておきましょう。
従業員が社内資料やSNS投稿で著作物を利用する場面も多くあります。
無断で外部コンテンツを使ってしまうと、思わぬ権利侵害につながることもあるため、社内向けに「著作権の基本知識」や「チェックフロー」を定めておくことが重要です。
法務部門や知的財産部門が中心となって研修やガイドラインの整備を進めると良いでしょう。
二次創作は魅力的な文化活動である一方、企業にとっては著作権リスクを伴う行為です。
トラブルを未然に防ぐためにも、ガイドライン整備や社内ルールの明確化が重要です。
著作権対応に不安がある場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。